添付文書の副作用の欄、数字はどう読めばいいのか
薬の副作用について、いちばん正確な情報は公的に無料で公開されています。ただ、専門家向けに書かれているため、はじめて開くと数字の意味がつかみにくい。この記事では、添付文書という文書の構造と、副作用の欄の読み方だけを説明します。特定の薬について安全だとも危険だとも述べません。
添付文書とは何か
添付文書は、薬の効能・用法・注意点を製薬会社が公的なルールに沿ってまとめた文書です。国が定めた記載要領があり、書く項目も順番も決められています。広告ではないので、都合のよい情報だけを載せることができません。
医療関係者向けの文書ですが、閲覧が制限されているわけではありません。医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトで、誰でも検索して読めます。薬の名前、または成分名で検索します。
探すときのコツは、商品名ではなく一般名(成分名)で検索することです。クリニック独自の名称がついた薬でも、中身の成分名がわかれば添付文書にたどり着けます。成分名は診察時に聞けます。
副作用は「11」番の項目にある
添付文書は項目に番号が振られていて、副作用は「11.副作用」に置かれています。ここはさらに2つに分かれます。
- 11.1 重大な副作用 — 頻度は低くても、起きたときの影響が大きいもの。どんな症状が出たら中止・受診すべきかが具体的に書かれています
- 11.2 その他の副作用 — 表形式で、症状の種類ごとに発現頻度が並びます
ここで最初の誤解が起きます。「重大」は頻度の話ではなく、深刻さの分類です。上に書かれているから起きやすい、という意味ではありません。順番と確率は無関係です。
パーセントの区切りは、薬ごとに違う
「11.2 その他の副作用」の表には、たとえば「5%以上」「0.1〜5%未満」「0.1%未満」といった列が並びます。ただしこの区切り方は薬によって異なり、「10%以上」「1〜10%未満」のように違う刻みが使われていることもあります。
つまり、表の中の位置だけを見て他の薬と比べることはできません。必ず、その表の見出しに書かれた区切りを確認してください。
「頻度不明」は、報告がないという意味ではない
ここが最も誤読されやすい部分です。
記載要領では、自発報告や製造販売後の調査で集まった情報のうち、発現頻度が計算できないものを「頻度不明」と記載することになっています。つまり「報告はあるが、何人中何人かを算出できない」という状態を指します。
なぜ算出できないのか。臨床試験なら「対象者100人中3人」と分母がはっきりしますが、市販後に医師や患者から個別に寄せられる報告には、分母にあたる「その薬を使った人の総数」が存在しないためです。
したがって、頻度不明を「めったに起きない」と読むのも、「実は多い」と読むのも、どちらも根拠がありません。頻度がわからない、以上の意味はありません。
「副作用」は原因が証明されたものではない
もうひとつ知っておくと数字の見え方が変わる点があります。添付文書に載る副作用は、薬との因果関係が否定できないものとして集められた報告です。薬が原因だと科学的に断定されたもの、という意味ではありません。
薬を飲んでいる期間に起きた不調は、薬とは無関係の理由で起きたものも含めて報告されます。それらも慎重に拾い上げたうえで並んでいるのが、この一覧です。安全側に倒して集められている、と考えるのが実態に近いでしょう。
見落としやすい「15.その他の注意」
副作用に関する情報は11番だけにあるとは限りません。「15.その他の注意」には、評価が確立していない報告や、動物実験で認められた所見のうち重要なものが書かれることがあります。11番だけを見て閉じると、この部分を見落とします。
読む順番
- 「11.1 重大な副作用」で、どんな症状が出たら受診すべきかを把握する
- 「11.2 その他の副作用」の表の見出しで、頻度の区切りを確認する
- 表の中身を眺める。頻度不明の欄も飛ばさない
- 「15.その他の注意」に目を通す
1番目がいちばん実用的です。確率を知ることより、異変に気づける状態でいることのほうが、日々の安心につながります。
数字を読んでも、判断は代わりにできない
添付文書を読めば不安が消えるかというと、そうとは限りません。むしろ知らなかった症状名が並んでいて、一時的に不安が増すこともあります。
ただ、読む前と後では不安の質が変わります。漠然とした「怖い」から、「この症状が出たら連絡する」という具体的な行動に変わるためです。そして、その数字が自分の場合にどう当てはまるのかを判断できるのは、あなたを診た医師だけです。
何を聞けばいいかは、副作用が不安なとき、診察で聞いておきたい8つのことにまとめています。
この記事は添付文書という文書の構造を説明したものであり、特定の医薬品の安全性を評価するものではありません。実際の記載内容はPMDAのウェブサイトでご確認いただき、解釈については医師・薬剤師にご相談ください。